仕事できない人が疑うべき「大人の発達障害」

仕事ができない人が自分は発達障害かもと考えている様子

整理整頓できないミスが多いやるべきことを先延ばしにする…あるいは、場の空気が読めないチーム作業が苦手気が利かない

皆さんはこんなこと、ないでしょうか。それ、もしかしたら「大人の発達障害」かもしれません。昔は、発達障害というと子供の発達段階で生じるものであり、成長とともに見られなくなっていくと考えられていました。しかし最近になって、大人になってからもこうした症状が残り、社会生活上の生きづらさを抱えている人がたくさんいることがわかってきたのです。

今までは「単に努力が足りない怠け者」や「ちょっと変わった人」と思われていた人が、「大人の発達障害」として、徐々にではありますが診断基準やサポートする制度が整備されつつあり、社会的に認知されつつあります。先述のようなことで「なんで自分は仕事ができないんだろう…」と悩んでいた方は、一度この記事をチェックしてみることをおすすめします。

仕事できない人が疑うべき発達障害とは?

そもそも発達障害って何?

発達障害とは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム障害)、LD(学習障害)などの総称です。そのうち近年「大人の発達障害」として頻繁に言及されるようになり、「仕事ができない」と思われていた人があてはまるとされているのが、前の2つ、ADHDとASDです。

これらは2013年にアメリカ精神医学会が約20年ぶりに改定した診断基準であるDSM-5にて分類されました。ADHDの成人への診断はDSM-5で初めて追加されたものですし、ASDという分類もこのとき、従来の自閉症やアスペルガー症候群をはじめとする各種障害を再定義して命名されたものですから、どちらも最新の概念であることがわかります。

これから、それぞれの症状と、具体的に仕事中にどういった問題が出てくるのかをお伝えします。もちろん、両方を併せ持っているケースや、ほかの精神障害も持っているケース、ギリギリ定型発達との境目にあって診断を下すのが難しい「ボーダー」であるケースなどもありますし、まったく障害によるものではないケースもあります。人は皆それぞれ、異なった性質を持っているのですから、これらはあくまで一例としてお考えください。

ADHDってどんな障害?

ADHDとは、Attention-deficit hyperactivity disorderの略で、日本語では注意欠陥・多動性障害といいます。症状としては不注意と多動性、衝動性の3つがあります。

不注意は具体的に言うと、注意力や集中力を維持できないため、周囲の刺激に反応して気が散りやすかったり、忘れたり物を失くすことが多いという症状を指します。仕事のことで言うと、周りの光や音で気が散って自分の作業に集中できなかったり人との約束や大事な用事を忘れてしまったり書類作成などでミスを連発してしまったり、といったことが起こってしまいます。定期券や家の鍵などをすぐに失くしてしまう人もいるようです。

多動性というのは、ソワソワと体が動くのを止められず落ち着かなかったり、話し出すと止まらず喋りすぎてしまう、というような症状を指します。例えば、会議やデスクワークで一か所に長時間とどまっていることができず、途中で席を離れてしまうようなことが起こります。休暇中などリラックスできる空間にいるのに、なぜかゆっくりくつろげない、ということもあるようです。

最後の衝動性は、思いついたことを今すぐやらないと気が済まなくて、人の話を遮ってしまったり、物事を計画的に順序だててやり遂げることが難しかったりする症状を指します。仕事でも、単調で長時間繰り返すタスクや、じっくりと考える必要がある難しいタスクが苦手で、実行するのを先延ばしにしてしまったり、途中で投げ出してしまうことがあります。仲間や上司と相談せずに勝手に仕事を進めしまったり、順番待ちをするのが苦痛だったりする例もあります。

ASDってどんな障害?

ASDとはAutism Spectrum Disorderの略で、日本語では自閉症スペクトラム障害や自閉スペクトラム症と呼ばれています。旧来、自閉症やアスペルガー症候群(俗称「アスペ」)と呼ばれていた症状もこちらに含まれます。これは対人・社会的コミュニケーションの障害、こだわりが強いことの2つが特徴となっています。

一つ目の対人・社会的コミュニケーションの障害については、幼少期に1人で遊ぶのが好きで、他人への興味が少なかったり、他人の気持ちを推し量ることが難しく、自分から気持ちを表現するときも独特な話し方や身振りを交えることが知られています。

大人になって社会に出てからは、話の「行間を読む」ことや場の「空気を読む」ことが難しかったり、相手のことを思って気を利かせることや、目的のない世間話が苦手だったりします。相手からの指示を理解しずらかったり、自分からの報告や相談が伝わりずらかったりするため、チームで相談したり、協力することに難しさを感じることも多いです。

もう一つのこだわりについては、自分の興味・関心のあることを暗記したり、収集することを好んだり、独特の行動パターンを繰り返すことが好きで、変化を嫌うようなことが挙げられます。子供のころに友達から「○○博士」と呼ばれるくらい何かのジャンルに詳しかったり、学校のテストでは突出して成績が良かったりする人がこれに該当することがあります。

逆に、社会人になってから重視されるような臨機応変に行動することが難しくて、勝手に自己流で作業してしまったり、新しく指示されたやり方で作業することができなかったりします。また、電話を受けつつ書類を作る、といったマルチタスクを同時にこなすことが苦手であることも多いようです。

治療法はあるの?

これらの発達障害の診療、診断を担当するのは精神科・心療内科です。こうした医療機関を受診すると、問診や検査を受けたのち、必要によっては症状を緩和するための薬を処方してもらうこともできますし、臨床心理士と連携してカウンセリングやSST(ソーシャルスキルトレーニング)などを受けることもできます。先述のような悩みがある方は、ぜひ一度、受診されてみてはいかがでしょうか。

また、これらの発達障害を持った人の多くが、困難を抱えながら社会で生活していく過程で、うつや不安障害、睡眠障害や摂食障害といった何らかの二次障害を併発しているケースが多く、これらに対する相談や治療も行ってもらえます。

処方される薬としては、ADHDの場合には、ノルアドレナリンやドーパミンの不足を改善する、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(ストラテラ)や中枢神経刺激剤(コンサータ)が治療薬として承認されています。一方、ASDに対しては現在、国内で直接の治療薬として承認されている薬は存在せず、適応外ではありますが二次障害の治療目的などでSSRIや抗不安薬、抗精神病薬が処方されることが多いようです。これらの薬を飲むことで、症状や社会生活上の困難がかなり改善されることがあります。

発達障害で仕事ができない人は、自分の良さを生かして働こう

決して誤解してはいけないのは、発達障害は「人と比べて何かができない」だけの劣った存在ではないということです。あらゆる物事には裏表があり、ある局面では短所になってしまうようなことでも、別の局面では強みになるからです。

そのため、発達障害を「病気」であり「異常」なんだと受け止めるよりは、自分の「頭のクセ」「特性」のように考えて、その「クセ」や「特性」がうまく人の役に立つような仕事を見つければいいのです。それだけ普通の人と違って特徴があるということは、他人にはできないことができて重宝され、大活躍するチャンスがあるということです。

実際、ADHDの人はフットワーク軽くエネルギッシュで、常識にとらわれずに新しいことにチャレンジする傾向があるので、クリエイティブな方面で才能を発揮できることがあります。例えば、評論家の勝間和代さんや、音楽グループSEKAI NO OWARIのボーカル、FUKASEさんは、自身がADHDと診断されていることを告白しています。

また、ASDの人は興味のあることについて知識を蓄積したり、習得した作業を正確に繰り返すことが得意なので、技術者や学者、プログラマーとして活躍することがあります。例えば映画監督のスティーブン・スピルバーグさんは、自身がアスペルガー症候群の診断を受けたと語っています。

逆にこれらの発達障害を持った人は、協調性や対人スキルを大事にするような接客業や営業関係はあまり向かないことが多いそうですが、プレゼンやお客さんへの売り込み、生徒への講義など、特定の形態においてはむしろ得意なケースもみられるようです。

発達障害で仕事ができないときは相談しよう!

今まで見過ごされてきた「大人の発達障害」、いかがでしたでしょうか。「仕事ができない」と悩んでいる方が発達障害であった場合、まずは自分の特性を良く知り、その上で自分にあった働き方を選ぶことが大事です。

「私もこれかも」と思った方は、ぜひ一度、発達障害専門の精神科・心療内科を受診し、自分が本当に発達障害にあたるのか、相談してみることをおすすめします。そのうえで、以下のように有用なアドバイスが書かれた書籍がたくさん出ていますので、それを読んでみたり、地域の互助コミュニティもたくさんあるので、同じ悩みを抱える仲間に出会って相談してみたりして、発達障害との上手な向き合い方を見つけていきましょう。

困ったときは、発達障害者支援センターや自治体の福祉担当窓口、ハローワークで相談すると、各種支援制度や支援機関の紹介、職業訓練、仕事選びについて相談に応じてもらえますから、今の仕事に悩んでいる方は、行ってみてください。皆さんの仕事生活がよりいっそう充実したものになることを願っています。

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